ゾウ使いさん達の生活向上が、ゾウの環境改善につながると考えたのはスリンプロジェクトだけじゃなくて、むしろタイ政府をはじめほとんどの人たちの一致した考え方です。
使役の用途が無くなったゾウは、ペットなのか?家畜なのか?実のところ誰も決められません。「ゾウはゾウなのだ」というところです。タイ国内に何か所かゾウの集積地をきめて、行き場のないゾウ使いの家族とゾウを保護しています。その中で、スリンプロジェクトは、いくつかの約束事を決めて、それに賛同してくれるゾウ使いの生活の面倒をみることにしました。
1 プロジェクトにいる間、ゾウの歩行に鎖をつかわないこと。自由に歩かせる
2 ゾウ使いのもつ先のとがった棒をつかわないこと
3 現金欲しさに街で物乞いをしないこと
4 プロジェクトに参加するボランティアの面倒をみること
などです。
スリンにはおよそ100頭以上のゾウがいると思いますが、スリンプロジェクトに賛同して参加しているゾウは私が参加した時点で6頭です(ゾウの出入りが多くて頭数は一定しない)。つまり、ほとんどのゾウはスリンプロジェクトとは無縁で政府や他のNGOの援助を利用していますが、ゾウ使いはゾウの足に鎖をつけて歩かせ、ゾウを鎌のようにとがった棒で制御します。それが伝統的なやりかたで、むしろスリンプロジェクトの約束事が画期的といえるのかな。熟練したゾウ使いは掛け声や普通の棒だけで十分ゾウを制御できます。乗馬の時に鞭を持つけれど普通は鞭なんて飾り程度だし(馬の視界に入っているというだけの価値)、それと一緒です。
プロジェクトは約束ごとに賛同したゾウ使いに、
1 プロジェクトからの資金(あるいは生活)援助
2 ボランティアのサービスがある(足手まといにならない程度の微々たるものだけど)
3 ゾウ使いと家族がつくった工芸品を買い取ってくれる。また工芸品をつくる訓練もしてくれる。
などなどです。
こうして、ゾウを必要以上に痛める鎖や制御棒などから自由になったゾウが、プロジェクトの保護でのびのびと暮らしていますが、ずーっとプロジェクトにいるゾウ使いは少なく、ほとんどはそのうちプロジェクトから出ていきます。同じところにずっといるのが苦手なのかもしれません。出入りが多いため、プロジェクトは今のところ一時的なシェルター的な役割を担っています。
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