The Redang Telegraph

2018年01月16日

大学入試センターの試験問題作成者って何を考えたのか?ムーミン原作はスウェーデン語だよ!

おどろくべき大学入試センターの問題。ほんとうにムーミンのことを知らない人が適当に問題を作ったということが、ありありとわかる。どうせ子供相手だし、適当でいいや!というレベル。

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問題はアニメーションとノルウェー語をフィンランド語をならべて、どのアニメがどの国かを、言葉とも対比させて答えるというものだけど、、そもそもなんでこれが地理の試験なのか?全然地理と関係ないじゃないか。外国語(北欧語)ならまだわかる?うんにゃ、わからん。

学習指導要綱にある地理Bの目的とは
「現代世界の地理的事象を系統地理的に,現代世界の諸地域を歴史的背景を踏まえて地誌的に考察し,現代世界の地理的認識を養うとともに,地理的な見方や考え方を培い,国際社会に主体的に生きる日本国民としての自覚と資質を養う。」(おいおい、外国人留学生は日本国民としての自覚なんていらないぞ?)

むしろ、代表的な民族衣装とかの絵のほうが地誌的には近いぞ?まあ、それはともかく、

ムーミンは、スウェーデン語を母語とするフィンランド人のトーベヤンセンが母語であるスウェーデン語で書いた物語です。ムーミンとフィンランド語は関係ありません

学習指導要綱的にいうと、なぜフィンランドの公用語が2つあるのか。その使われている地域と歴史的背景を考察すべきじゃないか。なぜムーミンの作者がフィンランドのマイノリティであるスウェーデン語話者なのか?に関連した設問のほうがよーーーっぽど、こんな設問より気が利いてる。

ちなみに水色と青がフィンランドの中のフィンランド語、スウェーデン語の両言語地帯で、紺色がスウェーデン単独語地帯です。つまり、フィンランドの中にはフィンランド語がわからないフィンランド人がいるということ。それでもかまいません、フィンランドの公用語はフィンランド語とスウェーデン語の2つですから。人口の5.4%がスウェーデン語話者ということです。これを1億2千万の日本で比較すると6百40万人ということになりますね。全然少ない割合じゃないです。

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詳しくはSwedish-speaking population of Finland https://en.wikipedia.org/wiki/Swedish-speaking_population_of_Finland
を参照してください。

フィンランド語のムーミンの物語はスウェーデン語の翻訳なので、原書を日本語に翻訳したというのと一緒のレベルです。

ムーミンだからフィンランド。フィンランドだからフィン語。だからアニメの絵とフィンランド語


という地理Bの主旨である「諸地域を歴史的背景を踏まえて地誌的に考察し,現代世界の地理的認識を養う」を全く理解していない、1970年代脳の人が昔懐かしいアニメを持ってきて、

嘘!完全に間違い


の問題をつくったわけです。
あのアニメの絵だけでも相当に誤解を生じる問題でしょう、だってムーミン谷は架空の場所でフィンランドであるとはどこにも書いてありません。だから、アニメーション(制作会社は日本の会社)のムーミン(もちろん日本語を話す)は設問にある「フィンランドに関するアニメーション」にはかすりもしない。これは日本のアニメーションです。一番関係が深いのは日本です。アニメーションで登場人物が話す言語は日本語です。
ついで原作(設問では童話となっているけど?あれを童話と呼ぶのはよほど現代感覚の欠如)と関係が深い言語はスウェーデン語です。

原作の作者の国籍と出版社がフィンランドというだけ(でも設問で原作が問われているのではなく「アニメーション」であると明記されている)。それでもってフィンランドとするのは地誌的にも十分おかしいと思う。だったら「魔女の宅急便」がスウェーデンに関するアニメであってもよかったレベル。

それだけでは「誤解」レベルですが、フィンランド語がついてきたら完全に「間違い」です。世の中には「文学」という分野があって、文学部、文学専攻というコースも多いのですが、この設問は文学部専攻の人たちにも嘆きの涙をくらわしていると思います。

いかに、日本人の学力が落ちてきたか如実にわかる例ですね。調べろよ、大学入試センター試験問題なんだし。しかも、出典の外国語が「旅の指差し会話帳」かよ、、指差し、、レベルね?とほほ、、レベルが低すぎて外国語学部、外国語専攻の人間も泣かしているぞ。「大学とは絵を指差しで外国語をやるところ」。せめて挿絵の人物ぐらい該当地の民族衣装ぐらい着せてやってよ。地理Bとは観光客相手の地理じゃなくて、地誌的な理解を深める学科でしょ?

あまりに広範囲にレベルが低いので、これ以上のつっこみをやるとこちらまで頭がおかしくなってしまう。日本の大学というのは、しょせん、その程度なんだよ。

ついでに言うと、「ちいさなバイキング ビッケ」の作者はスウェーデン人だし、角のあるカブトはバイキングはかぶりません(そもそも金属製カブトだって高価で普通はかぶれなかったのだ)。角のついたカブト伝説は後代の物語でできたらしい、、いままで角のついたバイキングのカブトは見つかってないそうです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Viking_Age_arms_and_armour

あくまでも本やアニメの世界であって、地誌学的には歴史考証されてないアニメなんてもってきちゃいけないだよ。。。。ヘルメットはバイクのをみてもわかるように「突起がない」ことが重要で(SGマークの基準にもなってる)、戦国武将の派手な脇立てとはちがうんです(あれだって戦闘用に塗った紙でできて槍や刀の打撃の際の引っかかりをなくすようにできているのがほとんど)。

<追記>
、、、にもかかわらず、大学入試センターはこの設問を「問題なし」としてるというニュースを読みました。これまたムーミンの背景の景色がフィンランドっぽいから類推できるだろうと訳のわからないこといっている。背景はどんな場所でもいいけど(ムーミン谷は谷ってぐらいでむしろ山がちで海が広がる)、絵の中心のムーミンはフィンランドにはいないぞ?架空の生き物だもん、だから背景も架空の場所とするのが普通の理解。真ん中の架空のムーミンは無視して、背景だけ見ろって頭おかしすぎ。

もはや、政府も官僚も大学も日本の社会の上から下まで、「間違ってました、すみません」と言えないらしい。どんなくだらない言い訳でも言い張れば良いとされるのが昨今の風潮。私の知ってた日本はどこに行っただろう。もはや、正直で率直なさっぱりした日本など、幻影にすら存在しないようですね。残念。

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