ハッジ参加にあたっていくつかのガイドを頂きました。
とても参考になりました…とはいえ、どうも間違っているように思えるものもあります。
ひとつは、時代と共にハッジの方法が変わることです。
たとえば、ミナーからアラファートまで移動も電車であっさりと15分で着いてしまう今のやりかたでは、「どこどこの谷間は早歩き…」というのは無いです。というか、いまどき徒歩で移動するのは薦められてないです。これは交通緩和と安全の問題からです。数年前のハッジのマニュアルでも、今は間違っているものもあります。もっとも、これはどんな都市ガイドでも同じです(だから、私が書いたものも2010年にはこうだったが、将来は必ず各人が自分で調べなおす必要があると声を大きくしたいです)。
日本語のマニュアルでしたら、日本人が主な読者と設定されているわけですので、むしろ、歩いていくのは交通安全、セキュリティ、健康面から「薦められていません」ぐらいは、どーん!と言うほうが親切かもしれません。
二つ目は、間違ったやりかたを覚えこんで書いた、あるいは誤訳ということもあります。これは、アラブ社会のいい加減さを考えたらやりきれない思いです。アラビア語で書かれたハッジのマニュアルだから間違いないだろうと思ったら大間違いです。
私の場合は、イフラード式のハッジ後のウムラが問題点(或いは誤記)です。日本語で書かれている2つの版にはウムラの必要性が書かれています。でも、アラビア語版では一切そんな記述がありません。何故イフラード式か?というと、いま、おそらく一番ポピュラーになりつつある巡礼方法だからです。この方法だと、4泊5日で終わり忙しい今の世の中にマッチしています。例えば、夜行便の機中泊を含めたとしても、6泊7日でハッジのすべてが完了。トラベルエージェントのなすがままに任せる必要はどこにもありません。
下のチャートをみると、イフラード式はハッジの後、ウムラが必要と書かれています。

同じものを拡大したものです。

別の版では、

本文に行くと、

拡大すると、

別の版では、

どうも、縦書きのほうは、横書き版を写しただけのようにも思えます。
これだけ、はっきりとハッジ後のウムラの必要性が書かれています。が、アラビア語のガイド(しかもハッジ参加者に配られたもの)では、ウムラのことなど、どこにも書かれていません。こう考えると、日本語版はサウジ以外の国で通常行われている慣行か、学派の見解の相違の域を超えないように思えます。


別の版では、

こんな感じです。巡礼者が多くなって、今回も義務だけやれば、スンナは軽視という傾向がサウジ・ハッジ省当局にあるように思えます。これは、同じ時間に集中されたら、とうていかなわない、適当にバラバラの時間にやってほしいという意図があるように思えます。
ちなみに、巡礼の4つの達成条件はこちら。
1 イフラームでいること
2 タワーフ・イファーダを行うこと
3 サアイを行うこと
4 アラファートに行くことこれだけやれば、ハッジを行ったことになります。これをやらなかったら他がどんなにできてても、ハッジを行ったことにはなりません。
そして、巡礼の義務は以下の7つです。
1 ミーカート以遠でイフラーム着用
2 アラファートに留まる時間の指定
3 ムズダリファでの夜営時間の指定
4 ミナーに滞在する日数
5 ジャムラートでの投石の日数
6 髪を短くしたり剃ったりすること
7 別れのタワーフこれで、とりあえず、外から見えるカリキュラムを全部こなしたことになります。が、全部やったからといってハッジが受け入れられるかどうかはわかりません。
それ以外はスンナです。やらなかったからといって、ハッジが無効になるわけではありません。
また別に記事にしますが、妙な理論で、あるいは慣行や、思い込みのトラップに落ち込むときは、うえの達成条件と義務だけに集中したほうがましです。でないと、ヘトヘトになったうえに義務をうっかり忘れたりしかねません。
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